太陽光発電コラムPV column
エネルギー
2023/10/11
再生可能エネルギーの雇用者数、2022年には1,370万人に急増
世界の再生可能エネルギー業界の雇用について、2023年9月下旬に国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が報告書を発表しました。
こちらの報告書は国際再生可能エネルギー機関(IRENA)と国際労働機関(ILO)によって作成されております。
今回のコラムでは再生可能エネルギー業界における雇用に関する発表と報告書についてご紹介致します。
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共同発表
(こちらの共同発表は、英語、アラビア語、中国語、フランス語、ロシア語、スペイン語、の翻訳版もあります。)
危機や課題にもかかわらず雇用は拡大し、産業政策の利用拡大により、より地域に根ざしたサプライチェーンが形成されることが、新しい報告書で明らかに。
アブダビ(アラブ首長国連邦)/ジュネーブ(スイス)、2023年9月28日 – 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)と国際労働機関(ILO)の新しい報告書によると、再生可能エネルギーの世界雇用は2022年に1,370万人に達し、2021年から100万人増加し、2012年の合計730万人から倍増しました。第10版になる『再生可能エネルギーと雇用 年次レビュー2023 (英語版)』は、両機関の継続的な協力の成果でもあります。
報告書によると、再生可能エネルギーへの投資は増加傾向にあり、多くの国で雇用創出につながっています。しかしながら例年通り、雇用の大半はいくつかの国に集中しており、特に中国は世界全体の41%を占めています。ブラジル、欧州連合(EU)諸国、インド、アメリカ合衆国(米国)などもそのひとつです。これらの国々は、世界の設備容量の大半を占め、設備、エンジニアリング、関連サービスにおいて重要な役割を担っています。
太陽光発電(PV)は、2022年に再び最大の雇用者となり、再生可能エネルギー部門全体の3分の1を超える490万人の雇用に達したことが、年次レビューで明らかになりました。水力発電とバイオ燃料の雇用者数は2021年と同様で、それぞれ約250万人、次いで風力発電が140万人になります。
IRENAのフランチェスコ・ラ・カメラ事務局長は、「2022年は、課題が山積する中、再生可能エネルギーの雇用にとって、またとない素晴らしい年となりました。さらに数百万人の雇用を創出するには、エネルギー転換技術への投資をより速いペースで進める必要があります。今月初めG20首脳は、COP28に向けた我々の提言に沿って、2030年までに世界の自然エネルギー容量を3倍にする努力を加速させることに合意しました。私は、すべての政策立案者に対し、この機運を、必要なシステム変革を推進する野心的な政策を採用する機会として活用するよう呼びかけます。」
ILO のギルバート・F・ホウングボ事務局長は、「このような複雑な移行期において、完全かつ生産的で、自由に選択できる雇用であり、社会的なまとまりもあり、そして万人のための適切な雇用を達成する重要な機会として捉えるためには、包括的なマクロ経済の成長、持続可能な企業、技能開発、その他の積極的な労働市場への介入、社会的な保護、労働安全衛生、その他労働における権利のための具体的な政策を開発・実施し、社会的な対話を通じて新たな解決策を見出す必要があります」と述べました。
雇用の質は、その量と同じくらい重要です、と同調査は指摘しています。社会的な正当性を進めるため、よりクリーンなエネルギーの未来への移行は、労働者、企業、地域社会など、すべての人にとって公正で包括的である必要があります。したがって、賃金、労働安全衛生、労働における権利に焦点を当て、効果的な社会的対話に基づく首尾一貫した統合的な枠組みが不可欠です。環境的に持続可能な経済・社会に向けた公正な移行のためのILOの環境的に持続可能な経済社会への公正な移行のためのガイドライン (英語版)は、政府やその他の利害関係者が活用できる、公正な移行を支援するための政策立案と行動に関する中心的な参考資料を提供するものです。
公正で包括的なエネルギー転換は、労働力の開発と多様性も追求しなければなりません。報告書は、教育や訓練を拡大し、若者やマイノリティ、社会から疎外されたグループのキャリアの機会を増やす必要性を強調しています。男女平等の拡大も不可欠です。現在のところ、自然エネルギーにおける雇用は男女間で不平等なままです。現在、太陽光発電技術は他の発電部門と比較して最も男女比のバランスが良く、40%の職を女性が占めています。
多くの国々が、適切な産業政策による支援を受けて、サプライチェーンの現地化と国内で雇用創出について関心を高めています。これは、エネルギー供給の不安を軽減したいという願望の高まりと密接に関係しています。中国はここ数年、こうした産業政策を幅広く推進し、成功を収めてきました。最近では、EU、インド、日本、南アフリカ、米国が、国内の製造業を刺激する取り組みについて発表しています。しかし、各国は、野心的なエネルギー転換を追求するためには、各国は現地化の努力と継続的な世界的な協力を組み合わせる方法を見つける必要があります。
報告書全文はこちら (英語版)
インタラクティブストーリー版はこちら 『進歩の10年: 増加する再生可能エネルギーの雇用 (英語版)』 と下記ご参照下さい。
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再生可能エネルギーの雇用、2022年には1,370万人に急増 10年でほぼ倍増
- エネルギー転換の進展に伴い、再生可能エネルギーの雇用は増加の一途
- 2021年の1,270万人から、2022年には1,370万人に到達。
- 過去10年間で、再生可能エネルギーの雇用はほぼ倍増。
表1. 世界の再生可能エネルギー雇用の技術別推移 (2012年-2022年)
太陽光発電と風力発電は依然として最もダイナミック
- 世界の再生可能エネルギー投資の大部分を集めているのは太陽光発電と風力発電であり、最もダイナミック。
- 太陽光発電は依然として最も急成長している部門であり、2022年には再生可能エネルギー部門全体の3分の1を超える490万人近い雇用を創出。
- 水力発電とバイオ燃料は2021年と同程度の雇用を創出し、それぞれ約250万人、次いで風力発電が140万人。
表2. 世界の再生可能エネルギー雇用 (技術別)、2022年
分散型再生可能エネルギー(DRE)は多様なスキルセットの機会を創出
- 分散型ソリューションは、信頼性の高い電力を提供するだけでなく、遠隔地を含め、雇用機会も提供。
- 例えば、小規模水力発電では、バリューチェーンに沿って、17,000人日(平均5キロワットの超小型)から、約64,000人日(50キロワットの小型)、160,000人日以上(500キロワットの小規模発電所)の雇用を必要。
- 熟練労働者の需要は、多様な技能に対する多くの機会を生み出し、地元での技能向上と企業育成を可能。
- 分散型再生可能エネルギー雇用市場の拡大は、正の乗数効果をもたらし、地域経済に恩恵をもたらし、貧困を削減し、社会開発を促進。
表3. 超小型、小型、小規模水力発電所に必要なスキルの分布
マーケットリーダーがその地位を維持
- 雇用は依然として比較的少数の国に集中。設置容量、機器の製造、エンジニアリング、関連サービスの地理的な広がりの不均衡を反映。
- 全雇用の3分の2近くがアジアに集中しており、中国だけで世界全体の41%。
- 世界の新規風力発電容量の半分と太陽光発電容量の45%が中国で設置。風力発電では、中国に米国、ブラジル、英国、ドイツ、スウェーデン、フランスが続く。太陽光発電では、米国、インド、ブラジル、オランダ、ドイツが続いた。
表4. 国・地域の再生可能エネルギー雇用 (単位: 千人)
太陽光発電部門は他の再生可能エネルギーよりも女性を多く雇用
- 太陽光発電の労働力における女性の割合はフルタイムの職種の40%を占め、他の再生可能エネルギー技術よりも高く、石油・ガス部門の約2倍。
- より公平で公正なエネルギー転換を加速させるためには、男女平等の拡大が不可欠。
- 技能格差の拡大を防ぐため、教育と訓練を拡大しなければならない。女性、若者、マイノリティなど、社会的地位の低いグループにも、歴史的に男性が支配的であったエネルギー産業におけるキャリアパスへの平等なアクセスを提供することで、より多くの才能を掘り起こす努力が必要。
表5. 太陽光発電部門における女性と他部門との比較
産業政策の利用拡大は、より地域に根ざしたサプライチェーンを構築可能にする
- 多くの国でサプライチェーンの現地化へ関心の高まり。グローバル・サプライチェーンの混乱に備えるためであると同時に、国内でより多くの雇用を創出するため。
- このため、地域の能力を高め、国内の製造業を活性化させるための産業政策が復活。EU、インド、日本、南アフリカ、アメリカでこうした取り組み。
- 一方、多くの資源国は、原料供給国という枠を超え、エネルギー転換の中でより大きな役割を果たすべく行動を起こしている。
ILOガイドラインの枠組み
- IRENAは国際労働機関(ILO)と共同でジョブズ・レビューを作成。
- 両機関は、化石燃料からよりクリーンなエネルギーの未来への移行は、労働者、企業、地域社会との関係において公正かつ包括的である必要があると強調。
- ILOが2015年に発表した「すべての人のための環境的に持続可能な経済と社会への公正な移行のためのガイドライン」は、政策立案の中心的な参考資料。
- 2023年、国際労働会議は、「包括的で持続可能かつ雇用の豊かな経済の促進」、「社会的正当性の推進」、「公正な移行プロセスの管理」、「公正な移行のための資金調達」という4つの構成要素に基づく実践的な行動枠組みを策定。
表6. 公正な移行のためのILOガイドライン: 行動の枠組み
公正で公平なエネルギー転換のための包括的政策枠組み
- エネルギー転換が幅広い社会経済的利益をもたらし、国や地域社会間の公平性を高め、気候や資源の制約と経済を一致させるためには、政府やその他の利害関係者が経済システムの変革に積極的な役割を果たす事が必要。
- 政策決定は、技術的な側面だけでなく、移行による社会経済的な側面も考慮した全体的な枠組みによるサポートが必要。
表7. 公正で包括的なエネルギー転換のための総合的な政策枠組み
このトピックの詳細はこちら (英語版)
出典元: IRENA and ILO (2023), Renewable energy and jobs: Annual review 2023, International Renewable Energy Agency, Abu Dhabi and International Labour Organization, Geneva.
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日本では太陽光発電や再生可能エネルギーに参入している企業で専門性の高い人材不足が見受けられるように思われます。またドイツでは太陽光の需要の高まりに対して、太陽光業界に従事する労働力不足によって工事開始までの着工期間が日に日に延びてきていると報告を受けております。
微力ではございますが、太陽光発電産業の健全な発展に貢献して参りたいと考えております。
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