太陽光発電コラムPV column
コンサルティング
2022/09/01
既存太陽光発電設備の増設ルール変更(案)に基づく評価①
昨年に英国・グラスゴーで開催されました国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26) において、日本は2050年のカーボンニュートラルを目指すとしています。
COP26 の日本パビリオンのWebsite: http://copjapan.env.go.jp/cop/cop26/index.html
2050年のカーボンニュートラルを目指す過程において重要な役割を果たす再生可能エネルギーの比率について、日本の目標は2030年に36~38%としております。
2022年8月17日に資源エネルギー庁で開催されました「(第44回) 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」のテーマである「再エネの大量導入に向けて(全50ページ)」の37~43ページには「太陽光発電設備のパネル張り替え/増設」における現行ルールの見直し(案)が記載されております。
こちらに記載されている価格変更に関する見直し案の概要と価格変更式の例は下記となっております。
<諸元>
当初設置されているパネル出力: 100kW
増設・張り替えによる増出力: 20kW
PCS容量・系統容量: 100kW (不変)
<価格変更式>
こちらの諸元と価格変更式をベースに下記条件にて、既存設備評価と増設による費用対効果の評価テーブルを策定しました。
- 2012年以降の50kW以上のカテゴリーのFIT価格(2012年度~2021年度、2022年度)。
- FITの残存期間は、シンプルに20年間~FIT価格年度(例: 2012年度のFIT価格の場合のFIT残存期間は10年)で試算。
- 2015年のFIT価格29円、27円の残存期間はそれぞれ12.5年、13年、で試算。
- 太陽光モジュールの劣化率(初年度2%、経年劣化0.5%/年)
- 発電量計算は、シンプルに年間日射量 1100 kWh/kWp で試算。
- 既存の太陽光発電所のパネル容量は100kW(諸元に記載の数値で試算)
- 増出力のパネル容量は20kW(諸元に記載の数値で試算)
- 増設後の太陽光パネル容量120kWに対し、パワコン容量100kWのピークカット計算はしないで試算。
- 増出力分の売電価格(円/kWh)は、10.0円~5.0円まで0.5円ごとに評価。
表1. 新規増設しない場合、劣化率を考慮した既存の太陽光パネル容量の想定出力推移 (kW)
表2. 一般的な100kWの太陽光発電所の2022年からFIT終了までの売電金額累計
ご参考までに残存期間中の売電収入の累計金額(推定値)は、昨今市場規模が大きくなってきている稼働済太陽光発電設備の売買の際の重要指標の一つとなっております。
次に太陽光パネルを新規に20kW分増設して、太陽光発電設備容量が120kWになった場合の試算は下記の通りです。
表3. 2022年時に20kWを新規増設し、FIT期間終了まで劣化率を考慮した太陽光パネルの想定出力 (kW)
表4. 2022年時に20kWを新規増設し、FIT期間終了までの売電金額累計
表5. FIT期間終了時までの売電収入差額の累計金額 (表4と表2の金額比較)
- 残存期間が短い場合、増設の費用対効果は少ない。⇒ 直近の案件は残存期間が長いため増設の効果が大きい。
- FIT単価が高い案件の増設の費用対効果は少ない。⇒ 直近のFIT単価の安い案件は増設の効果が大きい。
- モジュール単価をワット50円とすると20kWのパネル原価だけでも100万円かかり、パネル原価を含めた20kW増設の総工費は150万円以上かかる事が考えられる。
- 20kWのモジュール増設の総工費は、パネル増設によって増える売電収入よりも大きくなる(赤字になる)可能性もある。
今回の増設はパネル張り替えではなく、既設設備にそのまま20kWの新規モジュール追加の形で評価致しました。増設時の適用価格や各発電所の諸条件によっては赤字になるリスクもある事が分かりましたが、パネル張り替え・パワコン交換・パネル/パワコンの直並列の見直し・影対策等の発電量アップ(≒売電収入アップ)の手法とそれぞれの対策コストの評価をする事で、赤字の工事を避け、より効果的な増設・リパワリングの可能性も大きく広がったのではないかと推察致します。
(主な検討項目)
- 増設・張り替え用のモジュール選択(仕様、サイズ等)
- 既存パワコン継続使用の判断と交換時のパワコンのモデル選択
- モジュール・パワコンの組合せと直並列見直し
- 影対策のオプティマイザーの設置検討
- 架台の追加・改造の可否判断
次回のコラムでは、モデル発電所の例を基に、増設・リパワリングの比較評価を掲載したいと考えております。
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